明日の数学Gallery
お気に入りの具体例たちを並べました。たまにテキストの演習問題だったりします。
クイズ:分岐指数43,剰余指数47の2021次拡大の例は?
↑与えられた自然数e,fに対して、eを分岐指数、fを剰余指数に持つ局所体の拡大はあって、例えば上のL_e,fがそう。Qp(μ_p^n-1)は不分岐拡大の例(ヘンゼル体の不分岐拡大は剰余体の分離拡大との間に全単射がある。)で、それと完全分岐拡大の合成でok。
クイズ:分岐指数が43,剰余指数が47のQpの拡大の例を上げると(ア)である。
(答)上のL_43,47/Qp
なお、不分岐拡大は自動的にガロアだが、上のL_e,fはQ上ガロアとは限らない。
整数問題で射影平面??
単位円Fp有理点の個数を求める問題。問題自体はとても初等整数論的で、実際別解は色々あるけれど、アフィン代数多様体だと思って、射影化して余分に出てくる無限遠点を引くというのがスッキリ。pを4で割ったあまりで答えが場合分けされるのは、2乗して−1になる数があるかどうかによって、無限遠点が2つになるか、1つもないかが分かれるからだったんだね。
ちなみに、射影化した後の有理点の位数を求める時は、種数gの代数曲線Cについて成り立つ|#C(Fq)-(q+1)|≦2g√q でg=0としても求まる。
答えは、スーパーシンギュラー!
上の続きでg=1の場合。院試の口頭試問で聞かれた問題。楕円曲線のハッセの不等式の左辺が0になる楕円曲線としては、上のようにsupersingularな楕円曲線が例として上がる。逆に、左辺が0ならsupersingularな楕円曲線であることは、φ^が非分離であることからわかる。
pが2や3のときはsupersingularでもE/F3:y^2=x^3-x−1みたいに、E(F3)={0}となってsupersingularだが#E(F3)=4とはならないケースもある。
玉河数の有限性の証明に群スキーム登場?
玉河数の有限性という命題がある。Kを離散付値体とする。E_0(K)は楕円曲線の点で還元した時に非特異点に移るもの全体のなすE(K)の部分群であるが、これは指数有限の部分群であるという命題である。楕円曲線へのn等分点やTate加群への惰性群の作用で楕円曲線の還元の様子がわかるというNeron off shafarevichの判定法というものがあるが、それの証明に用いられる。
また、E(Qp)は無限群だがE(Qp)/mE(Qp)(weak mordel weilの定理の証明に出てくる群)は有限集合であることが、玉河数の有限性からすぐわかる。
初等的に理解できる命題であるが、証明にはネロンモデルが用いられる。
Neron modelの定義からε(R)からE(K)への自然な単射が定義でき、これが全単射であることはNeron mapping property(略してNMPから従う).
なお、単射性についてはε(R)からr,s:SpecR→εをとって、自然な射SpecK→SpecRとの合成が生成点上スキームの射として一致することからもすぐわかる。分離性の付値判定法からわかると言っても良い。
有限群であることを示したい群E(K)/E0(K)は、εのspecial fiber ε~をそのidentity componentで割った群と同型であることが、Tate algorithmを用いることで示される。その商群が有限群であることは、代数群に対しそのidentity componentは指数有限であるという事実から従う。
参考文献 J.H.Silverman Advanced topis of the arithmetic of elliptic curves
ピタゴラス数とヒルベルト定理90
これはかなり有名な話だが、ピタゴラス数をヒルベルト定理90という(元の問題に比べるとかなり)大がかなりな道具を使って求めるというもの。コサイクルを1つ上手く取ってくれば、それがコバウンダリになることから非自明な結果が出てくる。コサイクルをどう取るかが、問題。(*)のコサイクルであることのチェックを書いておこう。
局所大域原理と山(シャー、テイトシャファレヴィッチ群)
シャファレヴィッチ群は局所大域原理の成り立たなさ具合を表しているとよく言われる。楕円曲線では、固定点があることから自明に局所大域原理が成り立っている。山が局所大域原理の差を測るとは、次の意味においてである。
「与えれた楕円曲線Eに対し、その任意のトーサー(torsoro)について局所大域原理が成り立つこととEのシャファレヴィッチ群が自明であることが同値になる。」
これが成り立つ理由は、ガロアコホモロジーを見ているだけではよくわからないのだけれども、トーサーの商集合とガロアコホモロジーを同一視するとよくわかる。その同型はキャノニカルに与えられるので、同型を辿ることでproofの上から3行目のような山の特長付けが得られることがポイント。